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拠点形成の目的

「高知大学地域教育研究拠点の構築」は、平成28年度から始まった、第3期の中期計画に基づく研究拠点プロジェクトです。


複雑多様化する現代社会において、教育の必要性はますます大きくなっており、そうした中でも、様々なニーズを持つ子どもたちの持つ教育を受ける権利を十全に保証することが求められています。例えば、学校教育の段階からすべての子どもが分かる・学習活動に参加できる授業づくりを開発するとともに、特別な支援を要する子どもたちへの理解や合理的配慮の研究開発に基づき、子どもの特性に応じた二次障害予防と回復のための指導・支援を集積することを通して、ユニバーサルデザインにもとづいた教育システムを構築することが必要不可欠のものとなっています。


例えば、発達障害のある子ども達は、授業の内容理解の苦手さや、ルール理解と行動調整に苦手さなどの特徴を示します。こうしたことは、自己肯定感や参加感の低下、自己存在の過度のアピール等授業に沿わない不適切行動の増加に繋がり、さらにそれらは、授業妨害、不登校、自傷・他害などの二次障害へと繋がり、子どもたちはますます学びから遠ざかってしまうことになります。


この発達障害の二次障害の課題と対応は全国的にも喫緊の課題となっていますが、その対応には、とりもなおさず「分かる授業」をすること、すなわち授業のユニバーサルデザイン化、二次障害の初期兆候を示す段階で適切なアプローチの実施、二次障害を呈した後の回復を適切に行なうことが非常に重要となります。このように、これらは、単に特別支援教育の課題というわけではなく、全ての子どもたちを対象とする教育提供の在り方や教育制度の抜本的な改革として構想される必要があり、上記の3点を連続的かつ包括的にとらえた教育システムが求められているといえます。

拠点形成計画の概要

研究拠点形成は、3つのWorking Groupを作成しそれぞれに研究を推進すると共に、研究推進統括室を置き、各Working Groupからの研究知見に基づいて研究全体の課題解明を進めることによって、進める計画となっています。3つのWorking Groupは、①二次障害予防・回復に対応する教育システムモデル開発Working Group、②ティーチング・メソッド開発Working Group、③児童・生徒に関する大規模データ分析研究Working Groupです。

 

Working Group①は、発達障害に関する研究に基づいて、二次障害を示す児童生徒への適切なアプローチと二次障害を呈した後の回復に関する指導・支援の教育システムモデルを開発します。

 

Working Group②は、すべての子どもに分かることをめざした学級経営や教科指導の立場から授業のユニバーサル化について研究し、国際的な水準で先端レベルとなる実践モデルを構築することがその役割です。

 

Working Group③は、これまでの高知大学教育学部附属幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校の児童生徒の学力、体力、特性等のデータ分析をもとに、高知県の児童生徒のデータ、高知大学の海外協定大学等の附属学校の児童生徒データを収集することによってビッグデータ化し、それらの経験的分析を行い、児童生徒特性の国際間比較や特定の傾向を示す児童生徒の特性の解明を行います。

 

研究推進統括室は、各Working Groupの研究推進状況の交流、効率的な研究方法・推進策の模索、推進状況の管理を行い、Working Group①とWorking Group②の教育システムや実践モデル開発がWorking Group③のデータをもとにして行われ、またWorking Group①とWorking Group②の研究成果が総合的にユニバーサルデザインに基づく新たな教育モデルになるようにリードします。

ユニバーサルデザイン教育システムのPriSeTerモデル

本拠点研究では、以上のような現状認識と課題認識に基づいて、アメリカで開発された多層指導モデル(MIMモデル:Multilayer Instruction Model)を参考に、全ての子どもが学習活動に参加し得る授業づくりと二次障害予防と回復のための指導・支援を包括したユニバーサルデザイン教育モデル「PriSeTモデル」の開発とそのシステム化を果たすべき課題としました。

 

ユニバーサルデザイン教育システムのPriSeTerモデル

 

本拠点がコンセプトの柱とする、上記のPriSeTモデルは、次のような3層の指導モデルとして示されるものです。

 

【Primary】では、通常クラスのすべての子どもを対象として学級経営・教科指導における指導法の工夫を行う。これは授業のユニバーサルデザイン化であり、「全員が分かる・参加できる授業づくり」を目指した取り組みを指します。

 

【Secondary】では、Primaryの対応では十分ではない、特別な支援が必要な子どもが対象であり、所属クラスおよびリソースルームまたは特別支援学級などで、個人の課題に応じた社会性スキル指導や教科指導を行います。例えば、プリントやノートの配慮や個別的ICTの活用、机間巡視時の個別指導の配慮や席次配慮、T2(支援員)による補足指導などが該当し、また取り出し指導を展開します。

 

【Tertiary】では、Secondaryの対応でも不適応行動が顕著になった子どもを対象とする。この段階では、不登校や自傷他害行動など学校内リソースでの対応が困難となり、専門機関など学校外リソースを中心とした指導・支援を展開します。

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